プロコル・ハルム『グランド・ホテル』(ASIN:B00006HBQ8)

グランド・ホテル

 一般的にはプロコル・ハルムの最高傑作と言われているこの作品。確かに詞も曲もシンフォニックなサウンドも素晴らしいのですが、どこか物足りない。キース・リードとゲイリー・ブルッカーのコントロールから今にも逸脱しかねないようなスリルが感じられない。ブルッカー自身もかつてのやんちゃ坊主のような側面が陰を潜めている。平たく言えば、ちょっと高尚すぎる。こんなアルバムは解散間際に1枚作れば充分だ。
 そんな中、一人気を吐いているのがドラムのB.J.ウィルソン。荘厳なオーケストレーションと渡り合ってここぞとばかりに暴れまくっています。それでいて作品の世界観には傷ひとつつけない。むしろ彼のドラミングによる強力なアクセントがなければ、この作品は凡庸なポップ・アルバムに成り下がっていたかも知れません。
 もちろんソング・ライティングの完成度から言っても最高のレベルにあるこの作品。プロコル・ハルムを支えた五つの個性のうち、リード/ブルッカー/ウィルソンの代表作はと言えば、やはりこれで正解でしょう。
 残る二つの巨星、ロビン・トロワーとマシュー・フィッシャーについてはまた後日。いつになるかはわかりませんが。