高橋ユキヒロ『音楽殺人』(ASIN:B000007UHJ)

MURDERED BY THE MUSIC

 “テクノ”という名の得体の知れない音楽が誰にでも気軽に楽しめるものであることを教えてくれた1枚。リリース当時中学生だった僕にとってYMOからイントロデュースされた“テクノポップ”は、蓋を開けると何かとんでもないものが飛び出してきそうな印象を与える不気味な音楽ジャンルだったのです。イーノもろくに体験してないのにいきなりクラフトワークを聴いたらビビりますよね。これどうやって演奏してるの? この変な声はなに? といったブラックボックス的恐怖感。
 1980年前後の60年代ポップスブームも踏まえて制作されたであろうこの作品では、シュープリームスのカヴァーである『STOP IN THE NAME OF LOVE』やホットロッド風のギターが軽快な『BIJIN-KYOSHI AT THE SWIMMING SCHOOL』など、テクノとオールディーズの融合・調和が試みられています。なかでも鮎川誠の協力を得た表題曲『MURDERED BY THE MUSIC』、サンディーとのデュエットによる細野晴臣曲『BLUE COLOUR WORKER』は白眉! 明るく能天気なテクノ・ロックンロールを堪能できます。『MIRRORMANIC』のコーダの部分における教授のシンセ・ソロの適当さ加減といい、作り手も楽しんでいるのが伝わってくる音楽。今回聴き返してみて「良い時代だったのだなぁ」とあらためて実感させられました。
 ヌメヌメと気持ちの悪いユキヒロがお好みの方は『NUMBERS FROM A CALCULATED CONVERSATION』、そしてアルバムラストを締め括る大作『THE CORE OF EDEN』をどうぞ。特に後者の間奏における大村憲司の気迫のこもったギター・ソロ、ゆめゆめ聴き逃されるな!