CDのクレジット上では一応鈴木慶一名義になっていますが、実質的にはムーンライダーズの最新作。
主要な登場人物のうち江守徹演じるギンのテーマ曲はかしぶち哲郎が、梅垣義明演じるハナのそれは鈴木博文が手掛けています。キャラクターごとにテーマ曲を設けるのはサントラにありがちな手法とはいえ何とも贅沢なキャスティング。特にかしぶち曲は名作『恋する女たち サウンドスケッチ』を思わせる出来で、欧米の映画ファンを唸らせることでしょう。
白井良明はスリリングな『ドキドキのテーマ』を作曲。もちろん武川雅寛も演奏で参加しているほか、『交響曲第9番 ニ短調 フィドルヴァージョン』では編曲も担当しています。そして全体をまとめ上げているのがムーンライダーズを象徴する二人の作曲家、鈴木慶一と岡田徹の作品。病床から復帰後の岡田もなかなか好調なようで嬉しい限りです。
このアルバムのハイライトは当然のことながら作詞：鈴木慶一／作曲：L.V.ベートーベン／編曲・演奏：ムーンライダーズによる『No.9』でしょう。アニメとはいえ映画の主題歌がこんなのでいいの? と思わず突っ込みたくなるような張り切りっぷり。映画のテーマに即した慶一の歌詞もなかなか深いものがあります。先日引退された市井紗耶香さんにぜひこの曲を聴いて欲しい。
