山田風太郎・せがわまさき『バジリスク - 甲賀忍法帖』(ISBN:4063462463)

 読書って漫画かよ! って話ですが、前々から気になっていたのでまとめて読む機会が欲しかったのです。近頃は池波正太郎ばかり読んでいたので目先を変える意味もあり。
 非常に面白かったです。基本的にストーリーは原作通り、故に展開を知っているにもかかわらずついつい引き込まれてしまう迫力がありました。
 風太郎の忍法帖は言わばゲーム小説です。忍者は将棋の駒であり、どの駒とどの駒を対戦させるかという“組合せの妙”がすべて(例えば目の見えない敵に瞳術は効かない、など)。故に立回りの描写にはそれほど力が割かれていません。それが名手・せがわまさきの手に掛かると息をもつかせぬ壮絶な決闘シーンに。なかでもお奨めは室賀豹馬 vs 筑摩小四郎の一戦。原作では一瞬にして決着がついてしまうのですが、目の見えない者同士の戦いであることを上手く利用して見せ場たっぷりに描かれています。
 さて、本作のもう一つの魅力は女性キャラがどれもチャーミングであること。用いる忍法の性質上サービス満点の脱ぎっぷりを見せてくれる朱絹然り、運動神経が鈍そうな朧然り、ちょっと不思議ちゃんっぽい蛍火もまた然り。原作にはないキャラクター付けが次々と死んでいく忍者たちへの感情移入を高めてくれます。なかでもお胡夷は、大柄で肉感的でありながらちょっと気の小さいところが僕のお気に入り。原作を読んだときは当時全日本女子プロレスに所属していた長谷川咲恵みたいな娘を想像したのですが、本作でもまさにイメージ通りに描かれています。
 来春にはTVアニメ化されるということで、これも今から楽しみです。残酷描写は控え目になるでしょうが、その分朧や蛍火にまつわるサブエピソードの膨らみに期待したいところですね。
 ちなみに『Basilisk』というタイトルは甲賀弦之介の操る瞳術と朧の持つ“破幻の瞳”を表している模様。勉強になります。